楽器の練習をしようと思ったとき、まず伴奏が要ります。曲を作ろうと思ったら、打ち込みのアプリと、録音のアプリと、書き出して持っていく先が要ります。伴奏をつくることと、その上に自分の音を重ねることが、いつも別々の道具に分かれていました。
その2つをひとつの画面につないだ音楽制作アプリ 「Traknotta(トラックノッタ)」 を、App Storeで公開しました。
▶ App Storeで見る(2,000円・買い切り) | 製品ページ:Traknotta | 使い方:utaverse.tokyo
📌 Traknottaの3行まとめ
① 15ジャンル・100曲の練習用伴奏を、好きなキー・テンポ・コーラス数で鳴らして、アドリブを弾いて録れる
② ピアノロールの打ち込みと、コード進行に追従する40の伴奏スタイル・548のフレーズで、パターンから一曲まで組める
③ 最大8トラックに楽器を録って編集・ミックスし、WAV・MIDIで書き出せる。広告・解析・アカウントなしの買い切り
ポケットに入る、シーケンサーとMTR
ミュージシャンが長く持ち歩いてきた道具に、ポケットサイズのシーケンサーとMTR(マルチトラックレコーダー)があります。前者はコードを入れれば伴奏が鳴り、後者は自分の演奏を何本も重ねて録れる。Traknottaは、ヤマハのQY100のようなコード伴奏付きのシーケンサーと、ZOOMのR12のようなMTRの「何ができると便利だったか」を参考にして、その2つの役割をiPhone・iPadの1本のアプリにまとめたものです。
参考にしたのは操作の目的だけで、メーカーの音色・フレーズ・データは使っていません。両製品との互換性もなく、エミュレーターでもありません(メーカー各社とは関係のない当社の独自アプリです)。
クリーム色のパネル、緑の表示窓、物理キーのようなボタンは、先に公開したサンプラー「KIZUNA」の筐体デザインを引き継いでいます。画面は、SEQUENCE(打ち込み)、SONG(曲の構成)、RECORDER(オーディオ録音)、MIXER(ミックス)の4つに分かれ、どれもiPhoneの画面で操作でき、iPadでは広く表示されます。
100曲の練習用伴奏で、アドリブを弾く
フォルダメニューの「練習用プリセットソング」から、15ジャンル・100曲の練習曲を選べます。
| 系統 | ジャンル |
|---|---|
| ブルース・ジャズ系 | ブルース、ジャズ、ファンク、R&B/ソウル、ボサ、ラテン |
| ロック・ポップ系 | ポップ/ロック、ハードロック/メタル、ロックンロール、ヒップホップ、ダンス |
| その他 | カントリー、レゲエ/スカ、ワールド、バラード |
曲はジャンルのほか、ペンタトニック、ii–V、モード、分数コード、クリシェ、テンション、借用和音、拍内チェンジ、ダイアトニックといった練習テーマでも探せます。気に入った曲には星をつけておけます。
キーは12キーから、テンポは25〜300 BPM、長さは1・2・4・8・16コーラスから選んで作成します。練習画面には、いま鳴っているコードと次のコード、コーラス番号と小節位置、コード表、その曲の練習のヒントが表示されます。
- ドラム・ベース・鍵盤は個別にミュートできます。ベーシストならベースを消して自分が入る、といった使い方ができます
- 停止中にコード表の小節をタップすると、そこから再生できます
- 録音先を「Solo Audio」か「Solo MIDI」にしてRECを押すと、1小節のカウントのあとに自分のソロを録音します。録音は作成時に決めたコーラス数の曲末で止まります
キーをあとから変えると、伴奏とコード表は新しいキーに移りますが、すでに録ったソロの音声・MIDIの音程は変えません。録ったテイクを勝手に書き換えないためです。
練習曲を「編集できる曲」として作った理由
伴奏を完成した音声として流すだけなら、練習はできても、そこに手を入れることはできません。Traknottaの100曲は、普通のセッション(曲データ)として作られます。 伴奏はパターンと、小節ごとのコードに追従する仕組み(Chord Follow)で鳴っているので、「曲を編集」からコードもノートも自由に書き換えられます。練習していたブルースのコードを1か所だけ変える、ドラムのパターンを差し替える、といったことが、そのまま制作の作業につながります。
コードに追従させるとき、気をつけたのは「鳴らさない音」です。ポップスの3和音の曲で、伴奏に余計な長7度や9度が混ざると、響きが別の曲になってしまいます。Traknottaの練習曲の伴奏では、各音がコードの何番目の構成音かを持たせ、発音する瞬間のコードに合わせて3〜6音の構成音に置き換えています。3和音なら3和音のまま、9th・11th・13thのテンションコードでは最大6音まで鳴らします。シャッフルを指定したスタイルは、8分のシャッフルを音声の再生とMIDI出力で同じタイミングにしています。
100曲はいずれも、よく使われるコード進行の上に当社が作った練習用の編曲です。既存曲のメロディーや録音は入れていません。スロー・ブルースとシャッフル・ブルースのように、同じコード形式でテンポや編曲が違う曲もあるので、「100種類の独立した和声形式」という意味ではありません。
コード進行そのものを学びたい人は、コード進行の作り方入門や、スケールとモードの選び方もあわせてどうぞ。
パターンから、一曲へ
打ち込みは、SEQUENCEのピアノロールでグリッドをタップするか、WRITEを有効にしてオンスクリーン鍵盤からステップ入力します。ノートを選んで長さ(LEN)と強さ(VEL)を変えられます。
音色は274のメロディー音色と13のドラムキットを同梱しています。カテゴリーと検索で探し、試奏してから選べます。音源には、S. Christian Collins氏が公開しているサウンドフォント「GeneralUser GS」を、改変せずにライセンス全文とともに同梱しています。ライブ演奏、曲の再生、WAVの書き出しで、同じサンプル音源が鳴ります。
伴奏は、16のシーケンストラックとは別に、8つの伴奏パートで鳴らします。
- 40の伴奏スタイル:どれも当社で作った独自のスタイルで、それぞれイントロ、メインA/B、フィル(A→B、B→A)、エンディングの6セクションを持ちます。SONGで小節ごとにコードとセクションを決めると、その進行に合わせて鳴ります。スタイルを適用しても、メロディーのトラックと録音はそのまま残ります
- 548のフレーズ:40スタイルの楽器パートから、パート・音色・ノートの位置/音程/長さ/強さが同じものを重複として除いた数です。名前が違うだけのフレーズを別のものとして数えないようにしました。楽器・セクション別に探して、任意のパターンへ読み込めます
- コード:オンベース(分数コード)、1小節に2つ・4つの拍内チェンジ、8種類のコード進行テンプレート、停止中にMIDI鍵盤で押さえたコードの検出
範囲を指定してのクオンタイズ・移調・強弱・長さ・位置の調整、曲の途中でのテンポ変更、3/4・4/4・6/8の拍子にも対応しています。曲は最大1,024小節まで延ばせます。
8つのトラックに録って、整える
RECORDERでは、最大8本のオーディオトラックに録音できます。内蔵マイクのほか、外部のオーディオインターフェースから2トラックを同時に録れるので、ギターとボーカル、ステレオのキーボードといった録り方ができます。0・1・2・4小節のカウント、マーカー、チューナーもあります。
録ったテイクは、原音のファイルを残したまま、トリム、分割、複製、ループ、移動、フェードで整えます。長さの変更は、音程を保ったまま50〜150%に伸縮でき、このときは新しい音声ファイルを作ります。曲のBPMを変えただけでは録音は自動で伸び縮みしないので、合わせたいリージョンを明示的に伸縮します。
エフェクトはトラックごとに、コンプ、ゲート、リミッター、3バンドEQ、4種類の歪み、テンポに合わせたディレイ、13種類のリバーブ。ほかに共通のリバーブとディレイへの2系統のセンドがあり、8つの初期パッチと自作のパッチを保存できます。入力のモニターにもエフェクトをかけられますが、録音そのものはエフェクトなし(ドライ)で保存します。 あとからエフェクトを変えられるようにするためです。
打ち込みの音源トラックは、音声トラックに変換(フリーズ)でき、Undoで戻せます。
書き出しと、MIDI機器
できた曲は、24-bit/44.1 kHzのステレオWAV、トラック別のWAV(エフェクトあり/なしを選べる)、スタンダードMIDIファイルで書き出せます。SMF 0/1の読み込みにも対応し、新しい曲にも、いまの曲の途中にも取り込めます。録音を含むプロジェクト全体を共有すれば、別のiPhone・iPadで開いて続きを作れます。リハーサルやライブ用に、曲の順番と曲ごとの停止を決めたプレイリストも作れます。
MIDIは、USBとBluetoothのMIDIキーボードで演奏・録音でき、チャンネル別に複数のトラックへ同時に録ることもできます。コントロールチェンジ、プログラムチェンジ、ピッチベンド、プレッシャーを記録・編集でき、外部機器へMIDIクロックを送って同期させられます。
できないこと
実装していない機能も書いておきます。
- 外部から来るMIDIクロックへの追従、MTC、SysEx、MPE
- オーディオとMIDIの同時録音、自動パンチイン/アウト、機器ごとの手動レイテンシー補正
- 曲の途中での拍子の変更(テンポの変更はできます)
- AUv3プラグインの読み込み、アンプ/キャビネットのモデリング、マスター全体のリミッター、クラウド同期
データの扱い
セッションは端末の中に保存され、作業中は自動で保存されます。広告、解析、トラッキングのSDKは入っておらず、アカウント登録も要りません。プロジェクトや録音が当社に自動で送られることはありません。アプリ内の「削除」はセッションをアプリ内のDeletedフォルダへ移す操作で、完全な消去ではありません。
製品紹介、使い方、プライバシーポリシー、問い合わせのページは、日本語・英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語など12言語で用意しています(使い方)。
動作環境と価格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対応 | iPhone・iPad(iOS 18以降) |
| 価格 | 2,000円(買い切り)。広告・アプリ内課金・アカウント登録なし |
| 規模 | 練習曲100曲(15ジャンル)、伴奏スタイル40、フレーズ548、メロディー音色274+ドラムキット13 |
| トラック | シーケンス16+伴奏8、オーディオ8(同時録音2) |
| 書き出し | 24-bit/44.1 kHz WAV(全体・トラック別)、SMF、録音込みのプロジェクト |
| 通信 | 不要(制作・録音・書き出しはすべて端末内) |



