サンプラーで音を拾うとき、手順はたいてい3つあります。録音画面を開く。録る。どのパッドに置くか決める。そのあいだに、鳴らしたかった音は終わっています。
決めることを1つに減らしたサンプラー 「KIZUNA サンプラー/ビートメーカー」 を、App Storeで公開しました。
▶ App Storeで見る(500円・買い切り) | 製品ページ:KIZUNA
📌 KIZUNAの3行まとめ
① パッドを押している間だけ録音し、離すとその音はもうそのパッドで鳴る
② 録る・刻む・並べる・書き出すまでが1画面の中で完結する(96 PPQNシーケンサー+41種のFX)
③ バウンスは再生と同じエンジンをオフラインで走らせる。書き出し専用の経路を持たない
「録音する」を1ジェスチャにする
SAMPLE > REC画面では、パッドグリッドがそのまま録音ボタンになります。押している間だけ録音し、離すとその音はもうそのパッドに載っています。録音画面と割り当て先の選択を挟まないので、鳴った音を捕まえるまでが1ジェスチャで終わります。
待って録りたいときのために、しきい値オートスタートも用意しました。音が来るまで待って自動で録り始めますが、そのままだと立ち上がりが欠けます。KIZUNAはしきい値を超える直前までさかのぼって残すので、アタックの頭が切れません。
録音元は3つです。
- マイク
- ライン入力
- KIZUNA自身の出力(リサンプル)
加えて、Filesアプリ、iCloud Drive、他のクラウドからの読み込みにも対応しています。録音の上限はモノ40秒/ステレオ20秒です。
刻む
サンプルを切る方法は3種類です。
| 方式 | 切り方 |
|---|---|
| EQUAL | 指定した数で等分する |
| ATTACK | アタックを検出した位置で切る |
| LIVE | 再生しながら手で叩いた位置で切る |
切ったスライスは、そのままバンク一列のパッドに並びます。一定割合を裏返して元ネタらしさを消す機能も入れました。
打ち込みが、打ち込みに聞こえないように
打ち込んだビートが機械的に聞こえる原因は、テンポの正確さそのものではなく、同じ音が同じ強さで繰り返されることにあります。KIZUNAには3つの仕掛けを入れています。
- DRIFT:一打ごとにピッチとレベルをわずかに振る
- VEL > FILTER:弱く叩いた音は、小さくなるだけでなく暗くなる(生の楽器と同じ振る舞い)
- FEEL:タイミングとベロシティのばらつき
重要なのは、これらが決定論的であることです。ばらつきの種はパターンから作るので、同じグルーヴは毎回同じに鳴ります。ランダムに揺らすだけだと、気に入った揺れを保存できず、書き出した音も聴いた音と変わってしまいます。
組む
シーケンサーは96 PPQN、1〜99小節、バンクごとに99パターンを持ちます。
- スウィングは8分・16分・32分それぞれ別の値を覚えるので、片方を追い込んでももう片方が崩れません
- バンクごとに違うパターン長を持てます。ドラムは2小節、コードは4小節、装飾は1小節、という組み方ができます
- 99シーンと、99ポジションのソングチェーン
- ノブの動きはパターンに書き込まれます。レーンはパターンに属するので、パターンを切り替えるとスイープも一緒に付いてきます
41種のエフェクト
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| パッドごとのインサート | 19種 × 2スロット(フィルター、ドライブ、クラッシュ、フェイザー、フランジャー、リングモジュレーターほか) |
| センドFX | 6種 × 2系統(ディレイとリバーブを同時に鳴らせる) |
| パフォームFX | 16種。押している間だけ効き、同時に押せて、指を下へなぞると効き方が変わる |
| マスターチェーン | 4スロット(VINYL / TAPE / SHELF EQ / LIMITER) |
タイムストレッチは素材ごとにREPITCH/BEATS/TONAL/TEXTUREの4方式から選べます。
書き出した音が、聴いた音と違わない理由
多くの制作アプリでは、リアルタイム再生と書き出しが別の経路を通ります。だから「聴いた音と書き出した音が違う」が起きます。
KIZUNAのバウンスは、再生と同じDSPCoreをオフラインで走らせるだけです。同じボイス、同じインサート、同じセンド、同じマスターチェーンを通るので、書き出し専用の経路が存在しません。
書き出せるものは4種類です。
- パッド単体のWAV
- カレントシーンのミックス
- バンクごとのステム(同じ長さ・同じ開始点なので、DAWに並べるだけで揃います)
- Ableton Live Set(.als)/ DAWproject(Bitwig Studio・Studio One・Cubase)/ FL Studio・Logic Pro・GarageBand向けのステム+MIDI+取り込み手順
レンダースレッドで何をしないか
KIZUNAの音まわりの設計は、「レンダーコールバックの中で何をやらないか」で決まっています。DSPCore.renderの中では、メモリの確保・解放、ロック、ファイルI/O、ログ、ARCを一切行いません。
SwiftUI (AppState)
│ DSPCommand ring ▼ ▲ DSPFeedback ring
└──────────────────┴────────┴──────────────► DSPCore.render()
├─ 96 PPQN トランスポート
├─ シーケンサー
├─ ボイス × 24
├─ バンクバス × 4
├─ センドFX / マスターコンプ
└─ パフォームFX × 16
UIからの操作はロックフリーのリングバッファでコマンドとして渡し、メーターやプレイヘッドは別のリングで返します。パッド・ボイス・バンクの状態は事前確保したポインタに置き、差し替えられたサンプル音声は即座に解放せず数秒間retireしてから捨てます。
AVAudioPlayerNodeを並べる構成にしなかったのは、同一ブロック内でのチョーク、サンプル差し替え、パンチイン、テンポ変化をサンプル単位で正確に扱えないからです。トランスポート・シーケンサー・ボイス・FXは、ひとつのレンダーコールバックの中でまとめて処理しています。
つなぐ
AUv3インストゥルメントを同梱しているので、本体をインストールすればLogic Pro、GarageBand、AUM、CubasisなどのホストでKIZUNAをプラグインとして使えます。MIDIノート36〜99が4バンク16パッドに1対1で対応し、テンポ・トランスポート・ロケート・ループはホストに従います。
Core MIDIの入出力(USB/Bluetooth/ネットワーク)と自身の仮想ポート、MIDIクロックの受信(平滑化付き追従)と送信にも対応します。
⚠ 現在、アプリ内の表示は英語のみです
日本語化は今後のアップデートで対応予定です。スクリーンショットのキャプションは日本語ですが、画面の中は英語である点をご了承ください。
権利まわりについて
起動時に鳴る16音のキットは、すべてアプリ内でオシレーターとノイズから合成しています。工場サンプルの音源ファイルを同梱していないため、作った曲の配信で素材の権利を気にする必要がありません。
プライバシー面では、アカウント登録なし、広告なし、解析なし、トラッキングなし。ネットワーク通信を行うコードを持たないので、録音した音とプロジェクトは端末の中(またはご自身のiCloud Drive)だけにあります。
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | KIZUNA サンプラー/ビートメーカー |
| 提供開始 | 2026年8月 |
| 対応OS | iOS 18.0以降 / iPadOS 18.0以降 |
| 価格 | 500円(買い切り・追加課金なし) |
| 仕様 | 4バンク × 16パッド、同時発音24、48kHz/内部32bit float、書き出し24bit WAV |
| カテゴリ | ミュージック |
| 配信 | App Store |
| 開発・提供 | 株式会社Code and DESIGN |
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社Code and DESIGN(Code and DESIGN inc.) |
| 代表者 | 代表取締役 中島安彦 |
| 事業内容 | iOSアプリ・ゲーム・Webサービスの企画・開発・運営、受託開発 |
| Webサイト | https://code-and-design.jp/ |
| App Store | 開発者ページ |
関連する記事
リズムの取り方そのものはリズム感の鍛え方に、打ち込み方式の違いはトラッカーとピアノロールの違いにまとめています。コードやスケールの基礎は作曲のための音楽理論入門をご覧ください。同日公開のKAGARIBIはAUv3シンセなので、KIZUNAをホスト側のリズムに、KAGARIBIを音源に、という使い分けもできます。
鳴った音を、鳴ったその瞬間に捕まえる。そこだけは他の何より速くしたいと思って作りました。ご意見・ご要望はお問い合わせからお寄せください。



