レトロゲームの効果音には、不思議な説得力があります。コインを取ったときの「チャリン」、ジャンプの「ピュン」、やられたときの下降音。どれも数十ミリ秒の単純な音なのに、何が起きたか一瞬で分かります。

これらは録音された音ではありません。音源チップの機能だけで作られた合成音です。そして作り方には、はっきりした型があります。

この記事では、代表的な効果音を「どの波形を、どのエンベロープで、どう動かすか」というレシピの形で整理します。

📌 この記事の3行まとめ
① 効果音の正体は 波形 × ピッチの動き × エンベロープ の3要素だけ
ピッチを動かす方向で意味が決まる。上がれば良いこと、下がれば悪いこと
③ BGMのチャンネルを奪うので、どのトラックを譲るかを先に決めておく

効果音を構成する3つの要素

複雑に聞こえる効果音も、分解すると次の3つしかありません。

① 波形——何の音で鳴らすか

波形向いている音
矩形波(デューティ12.5%)細く硬い電子音。コイン、決定音、ジャンプ
矩形波(50%)太い電子音。警告、ブザー
三角波柔らかい。低音の衝撃、鈍い音
ノコギリ波ざらついた。レーザー、エンジン
ノイズ爆発、着地、風、足音、ダメージ

② ピッチの動き——音程をどう変化させるか

これが意味を決める最重要要素です。

  • 上昇 → 良いこと。取得、成功、レベルアップ、ジャンプ
  • 下降 → 悪いこと。失敗、ダメージ、落下、ゲームオーバー
  • 一定 → 中立。カーソル移動、選択
  • 上下に揺れる → 特殊。エラー、警告、ワープ

これは学習された規則ではなく、上昇=上向き=ポジティブという直感に沿っているため、説明なしで伝わります。

③ エンベロープ——音量がどう変化するか

  • アタック即・減衰速い → 打撃、クリック感。ほとんどの効果音はこれ
  • アタック即・減衰遅い → 余韻。取得音、成功音
  • アタック遅い → 溜め、チャージ、警告

定番効果音のレシピ

具体的なパラメータは環境で変わるので、方向性として読んでください。

ジャンプ音

波形:矩形波(12.5%〜25%)/ピッチ:低→高へ素早く上昇/長さ:0.1〜0.2秒/エンベロープ:即発音、緩やかに減衰

最もシンプルな効果音の一つです。上昇するピッチだけで「上に飛んだ」ことが伝わります。スイープ機能があるチャンネル(ファミコンのパルス1など)を使うと1音で作れます。

慣性を感じさせたいなら、上昇の速度を最初は速く、後半で緩める(対数的に)と自然です。

着地音

波形:ノイズ(低め)/長さ:0.05秒以下/エンベロープ:即発音、極端に速い減衰

ジャンプと対になる音です。ピッチを持たせず、短いノイズだけで十分です。長くすると爆発に聞こえるので、とにかく短く。

コイン・アイテム取得音

波形:矩形波(25%)/構成:2音(低い音を短く → 高い音を長く)/長さ:合計0.3秒程度

これが定番の型です。単音ではなく、2つの音を続けて鳴らすのが要点です。1音目を短く、2音目を伸ばすと「チャリン」に聞こえます。

音程差は完全4度・完全5度・オクターブあたりが安定します。3度だと柔らかく、オクターブだと華やかになります。

さらに豪華にしたいなら、3音以上の上昇アルペジオ(ド→ミ→ソ→高いド)にします。これはレベルアップやファンファーレの型です。

ダメージ音

波形:矩形波+ノイズを重ねる/ピッチ:高→低へ下降/長さ:0.2〜0.4秒

下降するピッチが「悪いことが起きた」を伝えます。ノイズを少し混ぜると衝撃感が出ます。

BGMより目立たせる必要があるため、他の音より少し音量を上げるのが実務上のコツです。プレイヤーが見落としてはいけない情報だからです。

爆発音

波形:ノイズ(周波数を高→低へ変化)/長さ:0.5〜1.0秒/エンベロープ:即発音、ゆっくり減衰

ノイズの周波数を時間とともに下げるのが要点です。一定のノイズだと「シャー」でしかありませんが、高い周波数から低い周波数へ移ると「ドカーン」になります。

小さな爆発は短く高め、大きな爆発は長く低め。長さと周波数の低さが、そのままスケール感になります。

レーザー・ショット音

波形:ノコギリ波、または矩形波/ピッチ:高→低へ極めて速く下降/長さ:0.1秒以下

下降が速いほど鋭くなります。連射する音なので、短くすることが最優先です。長いと連射時に音が重なって濁ります。

決定音・キャンセル音

決定:矩形波、短い2音の上昇、0.1秒
キャンセル:矩形波、短い2音の下降、0.1秒

UIの音は、とにかく短くします。メニュー操作は高速で連打されるため、長い音は必ず邪魔になります。

エラー・警告音

波形:矩形波(50%)/ピッチ:低めで一定、または2音を交互に/長さ:0.3秒以上

意図的に不快にするのがポイントです。短2度や増4度といった不協和な音程を同時に鳴らすと、はっきり「間違い」と伝わります。

ゲームオーバー音

波形:矩形波/構成:下降する4〜6音のフレーズ/長さ:1〜2秒

効果音というより短い曲です。半音階で下がる、またはマイナーコードのアルペジオを下降させるのが定番です。テンポを落としながら下がると、より落胆した印象になります。

BGMとチャンネルを奪い合う問題

ここが、レトロゲームの効果音設計で最も実務的な論点です。

音源チャンネルは限られています。効果音を鳴らすには、BGMのどれかを一時的に止める必要があります。ファミコンなら5チャンネル、ゲームボーイなら4チャンネルしかありません。

当時から使われている解決策は次のとおりです。

① 譲るチャンネルを決めておく効果音は基本的にノイズチャンネルパルス2(伴奏側)に割り当て、メロディのチャンネルは死守します。メロディが途切れると、曲が壊れて聞こえるためです。

② 優先度を設定する複数の効果音が同時に鳴るとき、どれを優先するか決めておきます。ダメージ音のような重要な情報は最優先、環境音は後回し。

③ 効果音を短くする奪う時間が短ければ、BGMの欠落は気づかれません。0.1秒程度なら、ほとんど分かりません

④ 効果音の直後に、BGMを正しく復帰させる音量やエンベロープの状態を効果音が書き換えてしまうため、終了後に元の状態へ戻す処理が要ります。ここを忘れると、効果音のあとBGMの音色がおかしくなります。

現代のゲームエンジンでは同時発音数の制約がほぼないため、この問題は起きません。ただしあえて制約を再現するなら、この設計が「らしさ」を作ります。

💡 効果音は、必ずゲーム画面で確認する
単体で聴くと良い音でも、BGMと一緒に鳴らすと埋もれたり、逆にうるさすぎたりします。必ず実際のプレイ中に確認してください。特にダメージ音とUI音は、聞き逃されないことが最優先です。

作る環境

効果音づくりに必要なのは、波形の選択・ピッチの変化・エンベロープの3つを触れる環境です。

当社が開発した ChipWave - レトロゲーム音楽チップチューン には、この3つがすべて揃っています。

  • 内蔵波形:パルス、三角波、ノコギリ波、オルガン
  • LFSRノイズ:32段階の周波数制御。爆発音の「高→低」も作れます
  • ADSR / GAINエンベロープ:ボイスごとに設定。短い減衰でUI音、長い減衰で爆発音
  • ピッチモジュレーション(PMON):隣のボイスで音程を揺らす。うねりや特殊音に
  • 実機方式のエコー:余韻を足す
  • 手持ちのWAVを取り込み:録った音をBRRへ自動変換して素材にできます
  • 作った音は .brr で書き出せるため、ゲームプロジェクトへ持っていけます

FM音源で作りたい場合は MegaTune が向いています。フィードバックを大きく上げてMULを極端にずらすと、金属的な打撃音や破壊音が作れます。

BGM側の設計はゲームBGMのループの作り方、音源チップごとの違いはチップチューン完全ガイドにまとめました。ゲーム用のドット絵素材についてはドット絵の描き方入門もあわせてどうぞ。

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