往年の16bitゲーム機から流れてきたような音を、いまのiPhoneで一から作れるようにしたい。エミュレーターで既存の曲を鳴らすのではなく、あの音源チップの制約ごと自分の作曲環境として使えるようにしたい。その考えから開発したチップチューンDAW 「ChipWave - レトロゲーム音楽チップチューン」 を、App Storeで公開しました。
▶ App Storeで見る(1,200円・買い切り) | 製品ページ:ChipWave
📌 ChipWaveの3行まとめ
① 16bitゲーム機の音源チップ方式を再現した、8ボイス・32kHzのネイティブ音源をiPhone・iPadへ
② ピアノロールで作曲し、BRR圧縮サンプル、ADSR、実機方式のエコーとノイズをボイスごとに調整
③ 手持ちのWAVをチップネイティブのBRRへ自動変換、SPCスナップショットの解析にも対応
背景:レトロゲーム音楽を「鳴らす」から「作る」へ
レトロゲーム音楽をスマートフォンで扱うアプリの多くは、既存データの再生か、あるいは音源チップとは無関係なシンセの「レトロ風プリセット」に寄っています。前者では自分の曲が作れず、後者ではあの独特の質感——サンプルの粗さ、エコーの掛かり方、ノイズチャンネルの鳴り——が再現できません。
当社はこれまで、UTapやRainyWaveといった音楽・リズムゲームアプリ、そしてLSDj互換トラッカー「HexaChip」の開発を通じて、モバイル上でのオーディオ処理と制作UIの設計を積み重ねてきました。
ChipWaveでは、その延長として 「音源チップの方式そのものをネイティブ実装し、その上に作曲環境を載せる」 という構成を選びました。エミュレーターのラッパーではなく、BRR復号、補間、エンベロープ、エコー、ノイズまでを自前のDSPコアとして書き、iPhone・iPadで直接鳴らしています。
8ボイスという制約を、そのままトラック数にする
ChipWaveのピアノロールは8トラックです。これは画面の都合ではなく、再現対象の音源チップが持つ8ボイスと1:1で対応させているためです。トラックを増やせない代わりに、どのトラックがいまどのボイスを占有しているかが常に一致します。
| 操作 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | 空いているセルをタップしてノートを追加 |
| 選択 | ドラッグで音程・位置を変更、右端ドラッグで長さを変更 |
| 削除 | ノートをタップして消去 |
| 拡大縮小 | ピンチ、または虫眼鏡の±ボタン |
クオンタイズは1/4〜1/32音符、テンポは20〜300 BPM、最大256小節まで扱えます。編集はUndo / Redo(⌘Z / ⇧⌘Z)に対応し、Mute / Soloは再生中でも即座に反映されます。再生ヘッドに合わせてピアノロールが横方向へ自動追従するため、鳴っている場所と編集している場所がずれません。
音源の制約は、64KBのオーディオRAM予算にも及びます。読み込んだサンプルがこの予算を超えていないかをアプリ内で表示し、実機方式の枠内で曲を組み立てられるようにしました。
実機方式のサウンドエンジンを、C++コアとして実装する
サウンドエンジンは内部32,000Hz固定のネイティブC++コアです。次の要素を、レジスタ単位の挙動に沿って実装しています。
- BRRサンプル復号(9バイトブロック)と4点ガウシアン補間
- ADSR / GAINエンベロープ、ボイスごとの左右独立ボリューム
- LFSRノイズ(32段階の周波数制御)
- 前ボイス出力によるピッチモジュレーション(PMON)
- ディレイ、フィードバック、8タップFIRによるエコー
Voice Inspectorでは、VOL、PITCH、ADSR / GAIN、ノイズ、ピッチモジュレーション、エコー送りをボイス単位で調整できます。パラメータ表示には16進数のレジスタ値を併記しました。「なんとなくレトロな音」ではなく、どの値がどの音の変化に対応しているかを、触りながら把握できるようにするためです。
小さなノブと、指で扱える32ptのタッチ領域。この2つを両立させるスライダーを用意し、パラメータ数の多さと片手操作の間を取りました。
手持ちのWAVを、チップネイティブのBRRへ
内蔵波形(パルス、三角波、ノコギリ波、オルガン)だけでも作曲を始められますが、レトロゲーム音楽の質感を決めるのはサンプルです。ChipWaveは、WAV / AIFF / CAFなど一般的な音声ファイルを読み込み、適応型エンコーダで32kHz mono のBRRへ自動変換します。.brr ファイルの直接読み込みと、選択ボイスの .brr 書き出しにも対応しました。
自分で録った音、シンセで作った波形、フィールドレコーディング。それらを圧縮方式ごと通すことで、後から「レトロ風」のエフェクトを掛けるのとは違う質感になります。
SPCスナップショットを、編集できる譜面に変換する
ChipWaveには、権利をお持ちのSPCスナップショットを解析する機能があります。SPC700 CPU・タイマー・音源チップの保存状態を直接実行して原曲を32kHzで再生できるほか、実行中のDSPレジスタ書き込みを採取して、8トラックのピアノロールへ自動変換します。
ゲームごとに異なるサウンドドライバのシーケンスデータを解読するのではなく、音源チップに対して実際に行われた書き込み(発音、音程、使用サンプル、音量変化)を記録する方式にしました。ドライバの実装に依存せず、共通の形式へ落とし込めるためです。ノート単位でのサンプル切り替えと、ピッチ・音量のオートメーションも保持します。
⚠ ChipWaveには、著作権のあるゲーム素材は一切含まれていません。SPC、BRR、WAVなどの読み込みは、必要な権利をお持ちの素材にのみご利用ください。解析・変換・保存はすべて端末内で完結します。
なお、編集用の音源コアはエンベロープと補間を制作向けに実装しているため、ビット単位で完全一致する再生を保証するものではありません。変換前の音を確認したい場合は、「SPC原曲」モードと切り替えて比較できます。できることと保証しないことを分けて表示するのは、HexaChipと同じ方針です。
iPhoneとiPadで、情報の密度を変える
iPadでは3ペインのスタジオ画面を用意し、トラック、ピアノロール、Voice Inspectorを同時に見渡せます。iPhoneではタブ構成に切り替え、いま必要な画面だけを大きく表示します。どちらもタッチ鍵盤から音色をすぐ試奏でき、プロジェクトは .snesseq のポータブルなJSON形式で保存・共有できます。完成した曲は32kHz・16bitステレオのWAVとして書き出せます。
アプリはネットワークを使いません。アカウント登録なし、広告なし、トラッキングなし、完全オフラインで動作します。移動中でも、電波の届かない場所でも、動作が変わらないことを前提にした設計です。
製品概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | ChipWave - レトロゲーム音楽チップチューン |
| 提供開始 | 2026年8月 |
| 対応OS | iOS 17.0以降 / iPadOS 17.0以降 / macOS 14.0以降(Apple M1以降)/ visionOS 1.0以降 |
| 価格 | 1,200円(買い切り・追加課金なし) |
| 対応言語 | 日本語・英語 |
| カテゴリ | ミュージック |
| 配信 | App Store |
| 開発・提供 | 株式会社Code and DESIGN |
会社概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 会社名 | 株式会社Code and DESIGN(Code and DESIGN inc.) |
| 代表者 | 代表取締役 中島安彦 |
| 事業内容 | iOSアプリ・ゲーム・Webサービスの企画・開発・運営、受託開発 |
| Webサイト | https://code-and-design.jp/ |
| App Store | 開発者ページ |
音源チップの制約は、不便さであると同時に、あの音楽を成立させていた設計そのものです。ChipWaveを、その制約ごと持ち歩ける制作環境として育てていきます。ご意見・ご要望はお問い合わせからお寄せください。
※ 記載の内容・仕様・価格は公開時点のものであり、予告なく変更される場合があります。ChipWaveは当社が独立して開発したアプリであり、特定のゲーム機メーカーによる公式製品ではありません。



