新しくアプリやWebサービスを作るとき、開発会社の何を見て選ぶべきでしょうか。

私たちは、少人数で企画から実装、公開、運用まで進め、実際のプロダクトを出している会社を重視してほしいと考えています。特に、最初は小さく作り、利用者の反応を見ながら改善していく案件では、この視点が役立ちます。

ここでいう「ミニマムな体制」とは、必要な設計やテストを省くことではありません。必要な専門性を備えたうえで、引き継ぎや社内調整を増やしすぎず、成果まで届けられる体制です。

この選び方には、どこまで根拠があるのでしょうか。開発費の構造、チームに関する研究、AIの実証実験から考えます。

💡 この記事の3行まとめ
① 開発会社は、少人数で企画から公開・運用まで進め、実際のプロダクトを出しているかを重視して選ぶ
② 人数を増やせば効率が上がるとは限らない。AIは一人で担える範囲を広げているが、引き継ぎや調整の工数は残る
③ 「少人数」「AIを使っている」という説明だけでなく、公開中の成果物、担当範囲、工数の変化、継続体制を材料で確かめる

開発費には営業や組織を維持する費用もある

開発会社の費用を考えるとき、エンジニアがコードを書く時間だけに注目することはできません。

経済産業省の企業活動基本調査の説明では、営業部門で発生する費用は販売費、本社の管理業務で発生する費用は一般管理費とされています。販売・管理業務に携わる人の給与や、部門の運営に必要な費用も含まれます。[1]

営業、企画、経営、実装を別々の担当者が担う体制では、それぞれの仕事に時間と費用が必要です。ただし、代表者や開発者が兼任する場合にも、その仕事に使う時間は発生します。また、企画やプロジェクト管理には、案件の成果に直接必要な仕事もあります。

したがって、確認したいのは、役割を分けることで得られる価値が、その体制にかかる費用に見合っているかです。

専門家の判断によって大きな手戻りを防げるなら、その費用には意味があります。一方、同じ説明を何度も繰り返すための会議や、決められる人に到達するまでの調整が多いなら、その必要性を確認する余地があります。

なお、会社全体の費用と、一件あたりの受注価格は別です。共通費用を多くの案件で分担できる場合もあるため、「人数が多い分だけ見積もりが高くなる」とは断定できません。体制と見積もりの内訳を合わせて見る必要があります。

人数を増やせば開発効率も上がるとは限らない

ソフトウェア開発では、チームの人数と成果の関係が研究されています。

2016年の学術誌に掲載された研究では、58のオープンソースプロジェクト、約58万件のコミット(コード変更の記録)を分析しています。その結果、チーム人数が多いときほど、1人あたりのコード変更量で測った生産性が低いという関連が確認されました。[2]

ただし、これはAI普及前の開発履歴を使った観察研究です。コード変更量は、製品の品質や顧客価値そのものではなく、受託会社の規模別料金を調べた研究でもありません。

開発会社選びにより直接つながるのは、DORAが示しているチームのあり方です。DORAはソフトウェア開発と運用の実態を調査する研究プログラムで、他チームとの細かな調整に依存せず、変更、テスト、リリースを進められる体制を重視しています。プロダクト、開発、テスト、運用の機能をチーム内に備えることも推奨しています。[3]

この知見を発注者の立場に置き換えるなら、商談で確かめたいのは次の点です。

  • 要望を聞く人は、実装上の制約も理解しているか。
  • 技術的な判断をする人と直接話せるか。
  • 仕様変更を、誰がどの範囲まで決められるか。
  • 開発から公開まで、どのような引き継ぎや承認が必要か。

少人数でも、判断と実装が近い体制なら有力な候補になります。大きな会社でも、担当チームに必要な専門性と権限があれば、同じ基準で評価できます。

AIは一人で担える仕事の範囲を変えている

AIによる開発効率の改善には、実験による裏付けがあります。

2026年に学術誌『Management Science』に掲載された研究は、Microsoft、Accenture、匿名のFortune 100企業の3社、計4,867人を対象にした無作為化実験を分析しています。AIコーディング支援の利用によって、開発者の完了タスク数が約26%増えると推定しました。[4]

主な指標は、開発者1人が1週間に完了したプルリクエスト(コード変更の取り込み依頼)の数です。実験は2022〜2023年に行われており、「現在のAIならどの案件も26%安くなる」という意味ではありません。それでも、開発成果を人数や従来の作業時間だけで判断する前提には、見直しの余地があります。

AIが補うのは、コードを書く作業だけではありません。

P&Gの専門職791人を分析対象とした新製品企画の実験では、AIを使う個人の提案品質が、AIを使わない2人チームと同程度の評価に達したと報告されています。研究開発寄り、事業寄りという専門分野ごとの偏りも、AIの利用によって弱まりました。[5]

これは1日の商品企画実験であり、ソフトウェアの開発・運用を1人で代替できると証明したものではありません。同じ研究では、AIを使う2人チームは、AIを使わない個人より、特に評価の高い提案を生みやすいという結果も報告されています。

ここから読み取れるのは、従来の役割分担を固定せず、AIを使ったときに誰がどこまで担えるかを見直す価値があるということです。企画と技術の両方を理解している担当者が、AIを使って検討や実装を進める体制も、比較対象に入れるべきでしょう。

AI導入後も残る引き継ぎと調整の工数を見る

DORAの2025年報告は、AIを、組織がもともと持つ強みや弱みを増幅するものとして位置づけています。AIの投資効果を高めるには、ツールの導入とともに、その下にある仕事の進め方を整えることが重要だとしています。[6]

この知見を踏まえると、発注者が注目したいのは、AIの導入によって実際の体制や進め方がどう変わったかです。

実装の工数を減らせても、要望の伝達、社内説明、確認、承認にかかる工数が変わらなければ、その部分は残ります。納期と費用を考える際は、実装以外の工程も含めて確認する必要があります。

同等の成果・品質・継続対応を確保しながら、不要な引き継ぎや調整の総工数を減らせるミニマムな体制には、費用を抑えられる余地があります。

ただし、原価が下がることと、見積価格が下がることも同じではありません。削減できた時間を品質確認や追加の改善に使う判断もあります。発注者としては、効率化の結果が、価格、納期、品質、改善回数のどこに反映されるのかを確認したいところです。

「AIを使っています」という説明だけで判断せず、どの工程が変わり、その変化が今回の依頼にどう役立つのかを聞く。それが、AI時代の費用対効果を見極める具体的な方法です。

少人数であることに加えて公開と運用の実績を見る

少人数で開発しているという説明だけでは、発注先を決める材料として足りません。実際に何を完成させ、どこまで担当し、その後どう運用しているかを確認する必要があります。

この「実績」を見る姿勢は、AI活用の評価にも当てはまります。

METRが熟練したオープンソース開発者を対象に、2025年前半のAIツールを使って行った実験では、AIを使える条件のほうが、作業に19%長くかかりました。一方、2026年2月に公表した続報では時間短縮の方向の推定が出ています。ただし研究者は、参加者や課題の選ばれ方の偏りなどから、改善幅を信頼性高く推定できないと説明しています。[7]

AIの効果は、対象の作業、ツール、使い方によって変わります。古い実験の数字も、本人の「速くなった」という感覚も、そのまま今回の案件の成果保証にはできません。

発注前には、次のような材料を見せてもらうことを勧めます。

確認すること見せてもらいたい材料
完成させる力公開中のアプリやサービス、実際に操作できる成果物
本人の担当範囲企画、設計、実装、テスト、公開のうち何を担当したか
継続して改善する力更新履歴、障害への対応、公開後に変更した点
今回の案件との相性似た技術や制約への対応経験、必要に応じた小さな試作
AI活用の実効性工程ごとの工数や手戻りの変化、見積もりへの反映
費用の妥当性作業範囲、品質条件、管理工数、運用費をそろえた比較
継続できる体制担当者不在時の対応、コードや資料の引き継ぎ方法

公開本数だけで、売上や事業成果まで判断することもできません。事業上の成果を求めるなら、開発実績に加え、利用状況や改善結果など、確認できる範囲の実績を見せてもらうべきです。

必要な専門性と継続体制まで含めて選ぶ

少人数の会社を重視する場合も、案件が要求する体制との適合は確認しなければなりません。

24時間の障害対応、複数の専門領域によるレビュー、大規模な既存システムとの連携、厳格な監査対応などが必要なら、それを担える人員や仕組みまで比較する必要があります。品質保証や継続対応を省いた安さでは、同じ条件の見積比較になりません。

また、前述のAIコーディング実験で生産性向上が確認されたのは、MicrosoftやAccentureなどの大企業です。大企業もAIによる効率化の恩恵を受けられます。[4]

したがって、会社全体の人数だけで優劣を決めることはできません。案件に必要な専門性を確保しながら、説明、判断、実装、検証をどれだけ無理なく進められるかを見るべきです。

その条件を満たし、少人数で公開・運用まで実践している会社には、相談する価値があります。最初の試作で判断の速さや実装の確かさを確認し、その結果を見て依頼範囲を広げる進め方も選択肢になります。

Code and DESIGNも同じ基準で判断してください

株式会社Code and DESIGNは、アプリ・ゲーム・Webサービスの企画・開発・運営と受託開発を行っています。企画・設計・実装から公開後の改善までを支援し、自社プロダクトも公開しています。[8]

当社をご検討いただく際も、公開しているプロダクトをご覧いただき、今回の案件に近い実績、担当範囲、進め方をご確認ください。

これからの開発会社選びでは、必要な品質を守りながら、ミニマムな体制で成果を出してきたか。そして、その進め方が今回の依頼にも生かされるか。 この二つを重視していただきたいと考えています。

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出典

情報確認日:2026年11月6日。研究結果から導いた発注先の選び方は、当社の見解です。以下の研究は、受託会社の規模別価格を直接比較したものではありません。

  1. 経済産業省企業活動基本調査「販売費及び一般管理費とはどのようなものか」。
  2. Scholtes, Mavrodiev & Schweitzer(2016)“From Aristotle to Ringelmann: a large-scale analysis of team productivity and coordination in Open Source Software projects”, Empirical Software Engineering, 21, 642–683。
  3. DORA “Capabilities: Loosely coupled teams”。調査に基づく知見であり、会社規模を無作為に割り付けた実験ではありません。
  4. Cui et al.(2026)“The Effects of Generative AI on High-Skilled Work: Evidence from Three Field Experiments with Software Developers”, Management Science。著者公開版。26.08%は利用者への効果の推定値で、標準誤差は10.3%。全対象者が一律に26.08%速くなったという結果ではありません。
  5. Dell’Acqua et al.(2026)“The Cybernetic Teammate: A Field Experiment on Generative AI and Teamwork”, Organization Science。掲載版は分析対象791人、事後アンケートまで完全なデータがある参加者は776人。
  6. DORA “State of AI-assisted Software Development 2025”。
  7. METR(2026年2月24日)“We are Changing our Developer Productivity Experiment Design”。2025年の結果と追試の限界を説明。
  8. 株式会社Code and DESIGN公式サイト。自社の提供サービス・公開プロダクトに関する情報。